不育症外来

不育症外来のご案内

当院では日本不育症学会認定医による不育症外来を設けております。

不育症に関する最新情報を国内外から速やかに取り入れ、エビデンス(科学的根拠)の高い情報と治療法を提供できる体制作りを心がけています。

今の不育症治療に悩まれている方や、他院で不妊治療をしているがセカンドオピニオンをお考えの方も、ご相談ください。

不育症の方は妊娠希望カップルのおよそ5%、全国におよそ35万人と推定され、習慣流産患者の方は、およそ1%とされています。

不育症に悩む方の8割以上はその後、出産することができますが、高齢女性(40才以上)や5回以上の流産歴がある場合には、出産率が低下しますので、早めに流産の原因を調べ、適切な治療に結びつけることが大切です。

日本不育症学会HPはこちらをご覧ください。

<不育症の検査をお勧めする方>

 2回以上の流産・死産を繰り返した時(出産歴がある場合を含む)
 妊娠10週以降に流産・死産になってしまった時

原因がわかれば適切な治療につながり、早い妊娠・出産に結びつきます。

初診Web問診票はこちらからご入力ください。

【不育症外来の流れ】

不育症外来初診可能であれば夫婦でご来院ください)
① 問診・カウンセリング

② 不育症1次検査(血液検査・エコー検査)

初診の際は、以下の4つの検査を行います。
(不育症1次検査は保険が適用されます)

●夫婦染色体検査(血液検査)
ご夫婦2人の染色体を検査します。

●内分泌検査(血液検査)
甲状腺機能と糖尿病の検査をします。

●抗リン脂質抗体検査(血液検査)
血液中の自己抗体(抗リン脂質抗体)を検査します。

●子宮形態検査 (エコー)
エコーで子宮の検査をします。

不育症1次検査:1万6050円

注:当院受診中に流産された場合は、流産胎児絨毛染色体検査を行うことができます。

再診(約3週間後)
③不育症1次検査の結果をご説明いたします。

④不育症2次検査(選択検査)
(不育症1次検査で原因が見つからなかった場合、不育症2次検査で不育症リスク因子の可能性を検査します。)

・プロテインS比活性測定(保険)
・プロテインC活性(保険)
・アンチトロンビン(保険)
・第ⅩⅡ因子活性(保険)
・抗核抗体(保険)
・抗フォスファチジルエタノールアミン抗体(自費)
・ホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体(自費)
・ネオ セルフ抗体(自費)

不育症2次検査(保険・自費)の合計:5万2800円
検査内容を全てご説明いたします、患者様のご希望される検査のみを実施いただけます。

④ 治療の開始
検査結果に基づいて今後の治療の説明をします。

不育症の原因・リスク因子

                                                                                                                   (Sugiura-Ogasawara et  al . 2012)

<不育症の明らかな原因>

胎児の染色体異常

胎児染色体の数的異常、特にトリソミー(3本の染色体)を多く認めます。
反復流産の半数以上は偶然に胎児染色体異常を繰り返す偶発的流産です。
それを見分けるには流産絨毛の染色体検査が欠かせません。
また、そのような方の場合、特別な治療を行わなくても次回妊娠予後は良好であることが多いため、すみやかに妊娠できる環境づくりが大切になります。

抗リン脂質抗体症候群

採血により血液中の抗リン脂質抗体(ループスアンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体など)を調べます。
この検査と臨床像から抗リン脂質抗体症候群の国際基準を満たす場合に診断されます。

治療方法は国際的に確立している妊娠初期からの低容量アスピリンとヘパリン併用により80%の方が出産できるようになります。

夫婦染色体異常

転座、逆位などの構造異常がどちらかにあると流産、先天異常児出産のリスクが高まります。
また、この検査前後には遺伝カウンセリングを受けて、遺伝に関する正しい知識をお持ちいただきたいと思います。

子宮形態異常

超音波検査で中隔子宮、重複子宮、双角子宮などの有無を検査します。
不育症では中隔子宮が多く見られます。

<不育症のリスク因子>(原因と言えるほどの因果関係がみられないもの)

内分泌異常

甲状腺機能検査(TSH,F-T3, F-T4)、糖尿病検査(空腹時血糖, HbA1c)をおこないます。
甲状腺機能低下症、糖尿病は流産リスクが高く、早産などの産科合併症リスクも高くなるため、妊娠前から内分泌機能を正常に保つことが大切です。
甲状腺機能異常や糖尿病は内分泌専門医に紹介し、妊娠許可が出てから不妊治療を再開します。

血栓性素因

欧米の不育症ガイドラインは先天的なプロテインS、プロテインC、アンチトロンビン低下症、第ⅩⅡ因子低下症を流産リスクと考えていません。不育症として治療が確立しているのは後天性の抗リン脂質抗体症候群のみです。
一方、不育症管理に関する提言2021(日本)ではプロテインS、第ⅩⅡ因子低下症を治療対象として考慮しています。

免疫異常

妊娠維持に免疫細胞の働きの重要なことが知られていますが、不育症との関連について、まだ明確な結論は出ていません。
さらなるデータの集積を待つ必要があるため、研究的位置づけとなっています。
一部の施設で採血によりNK細胞活性、Th1/Th2等の検査を実施していますが、まだ研究的位置づけとの理解が大切です。

生活習慣

肥満、喫煙、アルコール、カフェインは流産のリスク因子です。
生活習慣の改善として、減量を図り、禁煙、過度なアルコールやカフェインの摂取は控えるようにしましょう。

抗リン脂質抗体とは・・

不育症や膠原病などに見られる全身性自己免疫疾患の1つの自己抗体です。
この抗体が原因で起こるのが抗リン脂質抗体症候群です。
胎盤に炎症、血栓が生じることにより流・死産や早産、妊娠高血圧症候群、胎児発育不全などの産科合併症が起こります。

女性の年齢・・

35才以上から流産は受精卵の染色体異常の増加に伴い増えてきます。
特に、40才以上では流産が40~60%と高率に起こります。

女性の肥満・・

流産、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群のリスク因子です。
妊娠前の体質改善が大切です。


不育症の原因・リスク因子と治療

PGT-A/SRについてはこちらをご覧ください。

不育症外来

<参考資料>海外の不育症ガイドラインおよび日本版提言
RCOG 2011 (Royal College of Obstetricians and Gynecologists )
ASRM 2012 (American Society for Reproductive Medicine ) 米国生殖医学会
ESHRE 2017 (European Society of Human Reproduction and Embryology ) 欧州ヒト生殖医学会
不育症管理に関する提言2021(日本)(日本には、まだガイドラインがありません)


不育症管理に関する提言2021(日本)で用いている不育症検査の推奨度

推奨検査:十分な臨床的エビデンスがあり、各国のガイドラインでも推奨されている検査

・子宮形態検査(エコー)
・夫婦染色体検査
・内分泌検査
・流産胎児絨毛染色体検査
・抗リン脂質抗体(ループスアンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体、抗β2GP1抗体)

選択的検査:不育症のリスク因子の可能性はあるが、エビデンスが十分とはいえない検査

・特殊な子宮形態検査(MRI、子宮鏡)
・プロテインS
・プロテインC
・アンチトロンビン
・第ⅩⅡ因子活性
・抗TPO抗体
・抗核抗体
・抗フォスファチジルエタノールアミン(PE)抗体
・ホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン(PS/PT)抗体

研究的検査:不育症との関連は示唆されるが、エビデンスが不十分な検査

・ネオセルフ抗体
・末梢血のNK活性、NK細胞率、制御性T細胞率
・子宮内膜のCD56 brightNK細胞率、KIR陽性率、制御性T細胞

非推奨検査:不育症との関連が、現在は示されていないため推奨されない検査

・夫婦HLA検査
・混合リンパ球反応
・ブロッキング抗体検査
・抗HLA抗体
・サイトカイン定量、サイトカイン多型
・Th1 / Th2
・LH
・プロゲステロン
・アンドロゲン
・プロラクチン
・AMH
・インスリン


不育症外来


担当 日本不育症学会認定医 望月 修 医師
不育症外来:月、火、金曜日(初診のお時間はお電話でご相談ください)

<保有資格、役職>
日本産科婦人科学会専門医
生殖医療専門医
臨床遺伝専門医・指導医
遺伝性腫瘍専門医・指導医
家族性腫瘍カウンセラー
静岡がんと生殖医療ネットワーク(SOFNET)代表