2023年(1月~12月)当院の臨床成績
2023年の当院の臨床成績
生殖治療成績は胎嚢が見えた妊娠例(臨床妊娠)で記載することが世界的なルールです。
すなわち、hCG陽性で胎嚢が見えない化学妊娠は含みません。
そのため当クリニックでは化学妊娠を除いた臨床妊娠で報告しています。
Ⅰ.2023年生殖補助医療(ART)の成績


採卵は160人の患者さんに行い、周期数は291周期でした。
分割胚凍結は4周期、胚盤胞凍結は156周期に行いました。
胚移植は173人の患者さんに行い、周期数は271周期でした。
4周期が凍結分割胚移植、267周期が凍結胚盤胞移植でした。
胚移植の成績は臨床妊娠129周期(47.6%)、流産25周期(19.4%)、多胎1周期(0.8%)でした。
日本の凍結胚移植の全国平均(2021年)は臨床妊娠率が36.9%ですので当院の移植成績は全国平均よりも良好な成績となっております
(図1、日本産科婦人科学会、2023年8月29日:www.jsog.or.jp/activity/art/2021_JSOG-ART.pdf)。
女性年齢別のART成績を見ると、臨床妊娠者の平均年齢は34.8歳、非妊娠者は37.8歳と妊娠者で年齢が低い結果となりました。
また、採卵時年齢が29歳以下では臨床妊娠率が84.2%、流産率が6.3%でした。
30-34歳では臨床妊娠率64.2%、流産率が16.3%でした。
35-39歳では臨床妊娠率が45.5%、流産率が7.8%でした。
40歳以上では臨床妊娠率が26.0%、流産率が68.4%でした(図1、表1)
このように採卵時の年齢が上昇するにつれて妊娠率の低下と流産率の上昇が見られました。
以上のデータから、可能な限り早く生殖治療を行うことの大切さがわかります。
Ⅱ.2023年一般不妊治療(タイミング、人工授精)の成績
Ⅱ-Ⅰ. 一般不妊治療における妊娠成績


一般不妊治療は153人、381周期行いました。
一般不妊治療の臨床妊娠は51人(平均年齢32.9歳)でした。
一方で妊娠に至らなかった患者さんは128人(平均年齢34.4歳)でした。
また、年齢別に一般不妊治療の成績を見てみますと年齢が進むにつれて妊娠成績が低下していきます(図2、表2)。
このことから一般不妊治療において若い年齢での治療が有効なことが示されました。
Ⅱ-Ⅱ. 一般不妊治療における治療方法別の成績


図3はタイミングもしくは人工授精(AIH)の方法別の成績になります。
タイミング法を行った人数は134人(平均年齢34.1歳)、妊娠率は13.3%でした。
人工授精を行った人数は37人(平均年齢36.1歳)、妊娠率は16.9%でした(図3、表3)