2022年(1月~12月)当院の臨床成績

2022年当院の臨床成績

生殖治療成績は胎嚢が見えた妊娠例(臨床妊娠)で記載することが世界的なルールです。
すなわち、hcG陽性で胎嚢が見えない化学妊娠※1は妊娠には含まれません。
そのため当院では化学妊娠を除いた臨床妊娠で報告しています。
※1 化学妊娠:尿中またはhCG(血中にヒト絨毛性ゴナドトロピン)が陽性(+判定)だが、エコーで胎嚢を確認できていない状態。

Ⅰ. 2022年一般不妊治療(タイミング・人工授精)の成績

I-i . 一般不妊治療における女性年齢別の成績

一般不妊治療は187人、564周期行いました。
一般不妊治療の臨床成績は48人(平均年齢32.1歳)でした。
一方で妊娠に至らなかった患者さんは139人(平均年齢34.4歳)でした。
また、年齢別に一般不妊治療の成績を見てみますと年齢が進むにつれて妊娠成績が低下していきます(図1、表1)。
このことから一般不妊治療において若い年齢での治療が有効なことが示されました。

Ⅰ-ⅱ. 一般不妊治療における女性年齢別の成績

図2はタイミングもしくは人工授精(AIH)の方法別の成績になります。
タイミング法を行った人数は163人(平均年齢33.3歳)、妊娠率は9.3%でした。
人工授精を行った人数は54人(平均年齢35.0歳)、妊娠率は8.1%でした。(図2、表2)

Ⅰ-ⅲ. 一般不妊治療における卵巣刺激方法別の成績

最後に卵巣刺激を行って一般不妊治療を行った成績を示します。
クロミッドを使った周期は213周期で妊娠率は9.9%、セキソビットを使った周期は14周期で妊娠率は7.1%、フェマーラを使った周期は65周期で妊娠率は4.6%、注射(FSH、hMG)を使った周期は29周期で妊娠率は13.8%でした(図3、表3)

Ⅱ. 2022年 生殖補助医療(ART)※2の成績

採卵は159人の患者様に行い、周期数は269周期でした。
分割胚凍結は7周期、胚盤胞凍結は144周期に行いました。

胚移植は152人の患者様に行い、周期数は219周期でした。
3周期が凍結分割胚移植、216周期が凍結胚移植でした。
胚移植の成績は臨床妊娠104周期(47.5%)、流産22周期(21.2%)、多胎1周期(1.0%)でした。
日本の全国平均(2020年)は臨床妊娠率が36.0%ですので当院の移植成績は全国平均よりも良好な成績となっております。
(図4、日本産科婦人科学会、2022年12月7日 https://www.jsog.or.jp/activity/art/2020_ARTdata.pdf

女性年齢別のART成績を見ると、臨床妊娠者の平均年齢は35.0歳、非妊娠者は36.6歳と妊娠者で年齢が低い結果となりました。
また、採卵時年齢が29歳以下では臨床妊娠率が61.1%、流産率が18.2%でした。
30-34歳では臨床妊娠率が61.7%、流産率が8.1%でした。
35-39歳では臨床妊娠率が44.9%、流産率が27.3%でした。
40歳以上では臨床妊娠率が27.9%、流産率が41.7%でした。(図4、表4)

このように採卵時の年齢が上昇するにつれて妊娠率の低下と流産率の上昇が見られました。
以上のデータから、可能な限り早く生殖治療を行うことの大切さがわかります。

※2 生殖補助医療(ART):体外受精をはじめとする不妊治療の手法

2021年の実績はこちらからご覧いただけます。
https://art-ilc.jp/archives/