2021年(1月~12月)当院の臨床成績

生殖治療成績は胎嚢が見えた妊娠例(臨床妊娠)で記載することが世界的なルールです。
すなわち、hCG陽性で胎嚢が見えない化学妊娠は含みません。
そのため、当クリニックでは化学妊娠を除いた臨床妊娠で報告しています。

2021年度 一般不妊治療の治療成績

一般生殖治療の臨床妊娠は68名、その平均女性年齢は32.4才に対し、非妊娠者は34.5才でした。
やはり、一般不妊治療でも若い年齢での治療が有効な事を示しています。
このことは表3、図3でもよくわかります。
30才前半までは10%以上の妊娠率ですが、その後は急減して40才以上の方は臨床妊娠率2.6%でした。

表1 一般生殖治療 総治療数 1025名(重複含む)

例数臨床妊娠率
タイミング指導49010.2%
人工授精(AIH)13812.3%
卵巣刺激3979.8%
総数(重複あり)
1025

卵胞刺激を併用した場合、経口薬ではフェマーラが最も妊娠率が高く、注射薬では更に妊娠率が18.8%へと上昇しました。
注射薬は経口薬より高い妊娠率が望めますが、反面、多胎の増加や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発症に注意が必要です。

表2 卵巣刺激法別の成績

臨床妊娠率
経口薬

クロミッド
フェマーラ
セキソビット
9.3%
11.9%
8.6%
注射薬FSH/hMG18.8%

表3 一般生殖治療 女性年齢別の臨床妊娠率

臨床妊娠率
<30歳19.7%
30 – 34歳14.5%
35 – 39歳7.9%
≧40歳2.6%

2021年度 ART(生殖補助医療)の治療成績

採卵は263名、胚凍結は153名に行いました。
一方、凍結融解胚移植は250名に行い、臨床妊娠は97名、全体の臨床妊娠率は38.8%、流産率は18.6%、多胎例は1例で1.03%でした。
なお、当クリニックを卒業され、産科施設へのご紹介は76名でした。

因みに、全国のART治療成績の最新版(2019年)が日本産科婦人科学会から発表されています。
その凍結融解胚移植の臨床妊娠率は、35.4%、流産率は25.4%、多胎率は2.96%でした。

当クリニックの臨床妊娠率は全国平均を上回り、流産率、多胎率共に良好な成績を示しています。

女性の年齢別に臨床妊娠率と流産率を示します(表4、図4)。
一般生殖治療同様、女性年齢の上昇とともに臨床妊娠率が低下し、逆に流産率が上昇しています。
また、妊娠者(97名)の平均年齢が34.9才に対し、非妊娠者(153名)の平均年齢は36.3才と1.4才高い結果でした。

以上のデータから、なるべく早く生殖治療を行うことの大切さがわかります。

表4 ART治療 女性年齢別の臨床妊娠率と流産率

臨床妊娠率流産率
<30歳62.5%10.0%
30 – 34歳43.6%14.7%
35 – 39歳38.3%19.5%
≧40歳24.5%33.3%

2022年の治療成績はこちらをご覧ください。